初心者向け 平均単価を上げるためのプライシング
平均単価が上がると何が良いのかというと、限界利益額(粗利額)が上がり、少ない販売個数でも大きく利益に貢献できるようになること。単価アップによって、売り上げが伸びること。この辺がメリット。早い話が黒字になりやすい形になるわけです。
平均単価の低い商材をメインに扱うメリットは、お客さんが最初に購入するときのハードルが下がること。もう一つは、それなりの売上を出すことができれば、お客さんの数が増えるので、一定人数が自店舗から離脱しても大きく売上は下がらないことだと思います。
デメリットは、売上規模が大きくなると作業量が増えるため、人件費の比率が上がって「給料を上げづらい(粗利率が低い場合)」とか、それに伴って忙しいばかりで儲からないとか、弊害も起こりますよね。
そのため、どんなお店も単価アップに余念がないというのが正直なところで、特に飲食店は1日にお相手できる人数が限られているので、単価アップすることが売上や利益に直結してきたりします。
僕が気に入っているお店があるのですが、そこのプライシングが秀逸なので、ちょっと見て欲しいんです。
ラクレットのお店なんですが、これいわゆる松竹梅方式のプライシングをしています。で、僕が頼むのはいつも真ん中のグリル野菜のラクレットなんです。
この使い古されたとも言える松竹梅方式は、真ん中を選んでもらうための作戦の定番。
「ここまで上手に真ん中を選ばせるメニューを作るか!」と言わんばかりのメニューです。
1500円のはなんかしょぼいし、2500円のは胃に重そうです(笑)そこで、真ん中を選んでしまうんですが、価格的にも2000円以下でちょうど良いのです。
で、「こんなの知ってる」と思うかもしれないんですが、ここまで秀逸な松竹梅をきっちりと完成できているかというと、そういうお店って少ないんですよね。
一つのラクレットというシリーズで、ここまでのことができるわけですから、食べ物系でも、洋服でも、もちろん花でもそれができると思うんです。
これって、狙った金額で注文してもらって、満足してもらえる技の一つだと思います。
1950円が安いと思えるのは「アンカリング効果」という手法を使っています。
アンカーとなるポイントが2500円の肉になっているんです。残り2つは1000円代。安く感じます。
そして、「損失回避」という心理(損をしたくないという心の動き)が働き、「1500円も出しているのに、なんかしょぼい、失敗したくない」と考え、1950円のグリル野菜のラクレットを思わず頼んでしまうわけです。
このアンカリング効果と損失回避に関しては、行動心理学という学問の本によく出てくる単語で、定番中の定番。(お勧め書籍は最下部にリンク貼っておきます)
とりあえず松竹梅作っとこか。だけだと、真ん中にきちんとお客さんが魅力を感じるかというと、そうでもないんですよね。「一番得なのはどれだろう?」と考えた末、自分で率先して真ん中を選び満足します。だから、リピートするわけです。
ここで、一品あたり450円の単価アップが実現します。
また、この松竹梅の方法をお店全体で取り入れることもできます。
うちのお店は実店舗時代も含めると16年営業していますが、最初の実店舗時代の平均単価は1200円ほどでした。(オープン当初は800円が平均単価)
これって、取り扱う商材の平均単価と平均購入個数によって変化します。
それが、今では6000円から7000円にまで上がりました。
3000円前後の時代もあったし、4000円前後の時代もありました。でも今はそれくらいまで上がっています。もちろん季節によっても違いますが5000円前半から7000円前後で季節変動します。
何をしたかというと、お店の商品群を大きく3つに分けています。
3000円〜4000円前半群
5000円〜6000円群
10000円以上群
こんな感じの松竹梅を組みます。
※もちろん商材によってはそれができないので、1000円前後の商品もあります。
お店全体の商品の取扱品目が多いところにご注文は集まります。これはそのお店に入った時に、そんな雰囲気を感じるんだと思うんです。
コンビニで3000円とかまあまあ使いませんよね。コンビニは150円から500円程度のものが多い売り場です。スーパーは購入品目が多いので、3000円の方もいるし10000円超える方もいます。
一般的な居酒屋だと一人当たり2500円から4000円とお店によっても変わりますね。
焼肉屋さんだと6000円程度でしょうか。
1点だけ購入するようなお店だと、洋服屋さんとか靴屋さんかなーと思います。
服屋さんだとグローバルワークスとユナイテッドアローズでは取り揃えている価格帯が違いますよね。だから購入単価も変わります。もちろん客層も変わるので、単価アップ=客層を変える行為とも呼べます。
うちのお店も、3000円台の商品を残しつつ、5000円台の商品を投入して、1万円台の商品をチラチラ置いてみたところ、徐々に徐々にお客さんが変化してきました。
その後、3000円台の商品を減らし、5000円代後半の商品を増やして見た所、単価が1000円ほど伸びました。
商品が良くなる、より魅力的になるというのは当たり前のこととして、単純に値上げをする以外にも単価アップの道はあります。
なぜ単価を上げたのかというと、注文数が増えてしまい、みんなが忙しくなり過ぎてしまったからです。平均単価が3000円前後の頃は、休みは日曜日だけ。朝9時から夜19時までバイトの子たちは働いていました。離職率も高かったし、みんな疲れていました。もちろん、時給は東京都の最低時給でした。
これだと、みんなが疲労困憊するだけで、やりがいなどは感じられないと思い、少しずつ改善していったというわけです。
web担当者は座っているけど忙しいです。
梱包現場は当たり前ですが、大忙しです。
毎日ピリピリとした空気が流れるし、時給も上がりません。
まあ、働きたくない職場の典型ですよね。
それを、なんとかしたいと思い、少しずつ取扱商材の単価を上げていったというわけです。
もしも、給料を上げていこうと思ったら、利益額を増やすほかないわけです。
利益額を増やす方法はいろんな方法がありますが、その一つの方法として、松竹梅方式は超絶使えます。そして、お客さんも確実に満足度が上がっていきますので(良い商品をご提案すれば)、ぜひやってみてください。
最後に、行動経済学のわかりやすい本を数冊ご紹介しておきます。
まずは、田中先生の書いている「良い値決め悪い値決め」は行動経済学の初歩の本です。
そして、もっと根本から値決めを学びたいということでしたら、難しい退屈な本になりますが、これがいいです。「予想通りに不合理」は購買心理の名著です。でも、文章が論文っぽくて読みにくいです。
最後になりますが、行動経済学を押さえる上で絶対に外せないのが、ダニエルカーネマンのファスト&スローです。はい。退屈な洋書です(笑)
今すぐ使える自分のお店にあった施策を求めるなら、V字回復研究会へ入会がオススメです!
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