数字が読めると年収がアップするって本当ですか?~まえがき~
まえがき 「会計ドクター」こと、田中靖浩
ごきげんよう、読者諸君。
私は未来から来た「会計ドクター」の田中靖浩です。と言っても「会計ドクター」って何だかわからないよね。君たちの時代には、まだ一般的でない職業だから。
それは会計の知識をもとに、「お金と幸せ」を研究し、アドバイスをする職業だ。
私は2030年の未来からやって来た。
残念ながら、景気は低空飛行を続けており、「お金と幸せ」に対する関心は高まる一方だ。それもあって会計ドクターの仕事は忙しい。
最近、タイムスリップを利用した「人生やり直しま専科」という事業をはじめたのだが、そんな私のもとに、「どうか息子を救ってください」と1人のおばあちゃんが飛び込んで来た。
話を聞けば、息子さんが事業に失敗して自己破産し、ホームレスになってしまったらしい。息子さんの名前は古屋悟司。なけなしの金を差し出して、涙ながらに「よろしくお願いします」と頭を下げる彼女の姿を見て、「なんとかしましょう」と引き受けることになったしだいだ。いくつになっても親が子を思う気持ちは変わらないものだと、心を打たれた。
今回、不幸からの救出を目指す彼は、自動車販売会社の営業を経て、歩合制の教材会社の営業に転職、のちに花屋を独立開業している。 「勤め人のち社長」と言えばトントン拍子の出世に聞こえるが、自らが社長を務めた会社では社員に去られ、事業がめちゃくちゃになってしまった。
彼はどこから道を間違ってしまったのか? 私はしかるべき過去のタイミングまで戻って、彼に「やり直し」のヒントを授けようと思う。
ホームレスになってしまったが、彼のその人生を見ると決して悪い人間ではない。また怠惰でもない。むしろ人一倍のがんばり屋と言える人間だ。
ただ、残念ながら彼の「がんばるべき方向」がズレていた。そのズレは少しずつ大きくなって、「努力しても報われない」というイジケや、「俺ってすごいだろう」と傲慢をまき散らすようになってしまった。
もしかしたら読者にも、サラリーマンとして「なぜ報われないのだろう?」と落ち込んでいたり、「給料が少なすぎる」と憤慨していたりする人がいるかもしれない。 そんな人に、この物語はきっと参考になると思う。 「雇われている」うちは、会社全体の金の流れがなかなか見えない。サラリーマンは給料以外にもたくさんの報酬をもらっているのだが、そのことに気づかない。
彼のように社長になった人間は、立場が変わったとたん、「雇う側の負担」の重さに愕然とすることになる。それで従業員につらく当たってしまう。 このすれ違いを防ぐためには「雇われる&雇う」両者が会社の数字を学びつつ、よりよきチームワークについて考えねばならない。
本書をヒントにしてもらえば、読者も「収入と幸せ」の両方をアップさせることができるだろう。そうなれば会計ドクターとしてもうれしいかぎりだ。
おっと、こんなところで長話をしているヒマはない。そろそろ彼を救いに出かけねば。
では、読者諸君、また会おう。
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